昨日予定通り母とのデート。

ランチを食べ、展覧会をのぞき、家具や雑貨を中心にウィンドウショッピングをしてお茶。
 母はそもそも夜間のお誘いで出かけるのも、栄を歩くのも何十年ぶりか?というかんじ。
 気候に恵まれた昨日は、テレビ塔の下でとりわけゆったりとした時間を楽しんだ。
 母は今の一人暮らしになるまでが、他の人もそうであるように、なかなか窮屈で多忙な生活だったと思う。
 今、会うたびに潔く生き、美しくなっていく母をみて私もほっとする。
 次は私の番。これからきっと怒涛のような生活に入っていく。
 束の間の休暇に二人、貴重な時間を過ごせた。

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私は会って話すたびに、母を褒める。
 今後自立して生活するためスクワットと腕立てを毎日して体を鍛え、体重も適量になり身なりにも気を配る。
 真夏になるまではレース編みに熱中し、糸の買い付け先であるトーカイの定員さんが母のペースの速さと腕に唖然とするほど。
 「義明(父)は私の、家族の宝物だった」という言葉が母の口を衝いて出た日からしばらくして、
 気丈にも「私は一人で生きていきます。」と宣言し、祖父母と生活を続けた。
 私が働き出してためらわずに家を出られたのは、こんな母だからだ。
 いさぎよい子離れがあるから、迷いなく親離れできる。
 母方の祖母も女で一つで子ども5人を育てた人だ。
 今後何が起こるかわからないけど、「何とかなる。今まで何とかなってきた。」
 これはちょっとした合言葉のようになっている。


最近話すことは子どもの話題が増えた。
 塾や駄菓子屋を通じて地域の子どもを見てきた両親は
 「子どもは社会の財産、子育ては一大事業」という認識で私たち兄妹を育てたそうである。
 彼らの子である私にとって、あまりに正当な価値観にはっとした。本当にそうだと思う。

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昨日のメインは演劇鑑賞。
 今日、あすにも愛知県芸術文化センターにて計4回公演中 「ひとすじの糸」
 
演劇の作者である馬場豊さんはロビーにたっているときから緊張していた。初公演おめでとうございます。
 父母の友人でとくに母とは高校〜大学のサークルまで同じであった仲。
 作品は、先日のんほいパークで訪れた豊橋の二川を舞台にした、群馬出身の小渕しちさん(実在)による製糸業復興をめぐる物語。
 かけおちしたパートナーを獄中で亡くしたのちも、彼との約束を果たそうと慣れない土地で生糸一筋に研究・生産を続けた女性。
 歴史的資料としてもヒューマンドラマとしても感じるものがあった。
 揺らぎつつも、心身ともにたくましい明治〜大正を生きた登場人物に、自分のよわっちさを思いつつも、
 実際来年から豊橋に移り住み何をしようかと考えている身としては励まされる内容でした。
 しちさんが創設した二川幼稚園は現在でも多くの園児を育てているそうな。

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父と母は限られた年数の中、たぶんほかの家庭では信じられないほど一緒にいた。
 四六時中一緒にいた。
 それでもあきなかった、楽しかったと昨日母は話していた。


「わたしたち、これからじゃなかったの?」
 劇中のセリフと経験がリンクしつつも、私は今どこか安心している。
 きっと母ならこれからもたくましく生きていけると信じている。
 一人になったからこそ輝きを増していくこともある。
 そういう母という女性の人生を見届けていきたい。